アメリカ民主党内大統領候補選びの最新動向

 来年のアメリカ大統領選挙の民主党候補を選ぶ党内予備選に向けた闘いは激しさを増している。先週、フロリダ州選出のグレアム上院議員は予備選からの撤退と政界からの引退を表明したが、なお九人が争っている。あまり関心がないアメリカの大多数の人びとは、まだその九人の名前を覚えていないが、九人の政策の相違を知る人はさらに少ない。
 その中で最も右翼にいるリーバーマンは、前回の大統領選でゴアの副大統領候補となって知名度が高く、最初は二割の票を獲得したと報じられた。実はリーバーマンの政策はゴアよりブッシュに近い。中東政策などの面では、彼自身がユダヤ出身のため、ブッシュよりイスラエルを代弁している。今年夏、Move On (www.moveon.org)が実施したオンライン投票では、彼は三%の得票も得られなかった。
 次に右翼にいる退役将軍クラークは、出馬表明時に主流マスコミに高く持ち上げられたが、彼には選挙で選ばれた経験がなく、政策もない。前大統領クリントンに抜てきされて推薦も得られたと伝えられたが、クラーク本人は実は前回の大統領選でブッシュに投票した。リーバーマンとクラークは、勝ち目がないため、ともにアイオワ州での予備選に参加しないといち早く表明した。早晩、予備選で落ちると予測される。クラークはディーンの副大統領候補になるのでは、と噂されている。
 言うまでもなく主流マスコミは、すでにディーンを大統領候補と扱っている。それには一定の理由がある。ディーンの政策は必ずしも明確ではないが、リベラルなイメージを明快に先行させている。例えば「イラク侵攻は、わが偉大なアメリカの終焉の始まりである。私は大統領となってそれを阻止できる」と。Move On のオンライン投票でも半数近くの票を獲得し、献金額もほかの民主党候補よりはるかに多い。
 実は今、彼は連邦補助金を受け取らないと、以前の声明を転換した。連邦補助金はウォーターゲート事件で設定され、一人の献金額を二千ドルを上限として、最高一人二百五十ドルを補助する。その目的は、小額の個人献金を奨励し、大口の企業献金や金持ちの過度の介入を阻止することにある。ディーンの態度転換は企業献金や金持ちの支持を受け入れるため、ブッシュと同じ土俵に立つことで、多くの民主党支持者を裏切るものである。実は、今日一日で百人の民主党員がオンラインを通じてディーン支持からクシニッチ支持にまわった。
 クシニッチは民主党の中で最も左翼で進歩的な立場に立っている。彼の政策は、実は社会主義的で、すべての左翼組織(緑の党、労働党など)の政策アピール(雇用確保、反戦、医療保険の全国民化、高等教育の無料化、人道的移民政策など)を包括している(www.kucinich.us )。Move On のオンライン投票で第二位の二四%の得票を得たが、主流マスコミには意識的に無視されている。彼への献金は平均七十ドルで、支持者は少なくないが献金総額は多くない。
 私は二度、彼の講演会に出席して短く意見を交換した。実は私は、彼の選挙宣言を中国語に訳し、それは彼のウェブサイトに掲載される予定だが、なかなかプロセスが遅い。中国にいる友人は「そんなアメリカ政治家がいるの?」と信じない。
 クシニッチの状況は一九三四年のカリフォルニア州知事選挙とよく似ている。社会主義者シンクレアは民主党の予備選に大勝して、多くの無関心層を民主党に引き入れたが、彼は支配階級の政治的恐慌を引き起こし、共和党、財界と民主党上層部の連合によって選挙に敗北した。しかしアメリカの支配階級はシンクレアの訴え、政策を無視できず、いわゆるニューディールを開始した。現実にクシニッチの当選可能性は大きくないが、彼への投票数はアメリカの政治変動に大きく影響する。さらに彼に投票する多くの人は民主党を支持しないため、クシニッチを中心に来年の大統領選挙をきっかけに、アメリカ第三党の期待も持たれている。
(二〇〇三年十一月八日)

米・カリフォルニア州サンノゼ 趙京 かけはし2003.11.17号

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