アメリカ大統領選最前線--広がるMOVE ONの運動

 Move On(www.moveon.org)は一九九八年に"Censure President Clinton and Move On to Pressing Issues Facing the Nation"というオンライン請願書名でスタートした。初めは、ジョアン・ブレーズとウェス・ボンドという二人のシリコンバレーの企業家夫婦からであった。「9・11」事件以後、もう一人の重要メンバーエリ・パリサーがメーン州より加入してきた。今は全部で六人である。このチームが自称百七十万オンラインメンバーを有している。筆者もその中の一人の読者で、たしかにMove Onの政治のリベラルなメッセージに不快感を持つことなく「洗脳」された。
 Move Onを全米にわたって一躍有名にしたのは、民主党内大統領候補選をオンライン投票で実施したこと。技術的にいろいろ難点、疑問点もあるが、オンライン献金に照らして、このオンライン選挙はかなり成功した。その結果はハワード・ディーンを先頭ランナーに担ぎだした。うわさによると、Move Onはディーンの応援チームに入るつもりだったが、オンラインでディーンの票数が五〇%に満たないため断念した。その「投票」で第二位のクシニッチ(二三%)、第八位のシャープトン(一%)のディーンのとあわせると、Move On投票者の反戦色がいちじるしく示される。ゴア前副大統領もMove Onの主催する会議に出席し、マスメディアは民主党全国本部よりもMove Onの動向を報道している。
 約二カ月前からMove OnはMoveon.org有権者基金を設立して、「三十秒ブッシュ」広告を公募した。すると千五百通の応募が来て、オンラインで十五件を選び、さらに有名人芸術家によって一件を選抜した。筆者も楽しんで「投票」した。確かに質こそいろいろあるが、ブッシュに対する憤怒がよく感じられる。一つの広告は、ブッシュをヒトラーになぞらえたため、共和党全国本部の強い抗議で取り下げた。
 最終的に選抜された広告は「チャイルズ・ペイ(子どもたちの支払い)」という題名で、十八世紀のような児童労働の場面を映し出し、「だれがブッシュの一兆ドルの借金を支払うのか?」という字幕で終わる。Move Onはすでにソロスなどの富豪と一般の献金者から一千万ドル規模の基金を獲得し、CNNを含めて大手メディアTVチャンネルで、この広告を流している。
 しかしCBSチャンネルは放送を拒否した。「スーパーボール」のシーズンに一億三千万人がTVを見る時に、この三十秒広告を流すと効果は大きい。しかしCBSはこの百三十万ドルの広告費を受け取らない。理由は「あまりに物議をかもす」からだが、実際は共和党の圧力である。つい最近、このCBSはロナルド・レーガンを罵倒する「物議をかもす」放送を取り止めた。
 Move Onは納得しない。彼らは国会内で民主党議員をかつぎだしてCBSに挑戦しながら、何十万人もの会員を動員してCBS本社に電話をかけ、電子メールに投稿した。さらにCBSチャンネルを見ないボイコットを提起する。このMove On vs CBS自体も新聞種になった。今週日曜日のLAタイムズも意見投書を載せて、なぜCBSが公共政策論議を恐れているのかと質問する。
 民主党内の候補選びはまだ始まったばかりで、これから十一月までアメリカの選挙は歴史上最もホットな闘いになるに違いない。

米カリフォルニア州サンノゼ  Jing Zhao
(1月31日)

かけはし2004.02.16号
http://www.jrcl.net/web/frame040216d.html