米大統領選民主党内候補者選
クシニッチ候補の政策
 
 クシニッチは一九七〇年代末、三十一歳の若さでアメリカの大都市クリーブランドの市長に選ばれた。彼は市営の電力事業をミューニーライトという会社、および銀行に売却しなかったため、次の選挙ではクリーブランドの財界の介入で落選した。十五年間、彼は公共の場に現れなかった。
 
 しかし九〇年代になってから、クリーブランドの住民たちは、まわりの都市の民営化された電力システムの高額な負担を見てクニシッチの業績に感謝し、彼を再び公共サービス(政治)に復帰させた。一九九六年以来、クシニッチは連続して国会議員に選出された。いま彼は、国会内民主党の最大派閥である「進歩的コーカス」の会長である。もう一人の共同会長は、あの「ただ一人」ブッシュに反対したバーバラ・リーである。
 
 いまクシニッチは民主党内で二〇〇四年大統領選の候補者選びに出馬し、ほかの八人と争っている。彼の政策は民主党の伝統的な路線と異なって、多くの進歩的な勢力、または政治無関心層の支持を呼び出した。例えば、労働党は独立性を保つため民主党候補を支持しないが、その多くの党員(筆者を含めて)は彼を支持している。多くの緑の党の支部と党員も彼を支持している。前回大統領選で緑の党の候補として出馬したネーダーは、クシニッチが出馬すれば彼自身が立たないと表明した。
 
 ではどうして、アメリカの主流マスコミはクシニッチを意識的に無視し続けるのだろうか。クシニッチの選挙政策は何であろうか。
 
 1. 普遍的な国民健康保険制度の確立
 現在の、利潤のための私営保険制度では、四千万人の人に保険がなく、三千万人の人はミニマムな保険しか受けていない。保険がある人でも高額な費用を払わなければならない。この制度はもはや失敗した。
 国会会計総局(GAO)の研究では、「アメリカがカナダのような普遍的国民健康保険制度に移れば、行政コストの節約によって、十分に全人口の保険をカバーできる」と結論づけられた。
 クシニッチが大統領になれば、そのような普遍的国民健康保険制度を確立する。
 
 2. 六十五歳から社会保障を完全受給
 社会保障制度は、わが社会と労働者との基本契約である。それは絶対に民営化されてはならない。経営者(CEO)が普通の労働者の二百四十倍の収入を得ている現在、六十五歳になった労働者は完全な社会保障を受給しなければならない。
 
 3. NAFTAとWTOから撤退
 NAFTA(北米自由貿易協定)とWTOは、多国籍企業に莫大な財産をもたらし、労働者、農民と環境を底辺におとしいれた。クシニッチが大統領になれば、第一の仕事はアメリカをNAFTAとWTOから撤退させ、新たな公平貿易条約を締結することだ。
 
 4. 「愛国者法」を廃止する
 「愛国者法」は、アメリカへの愛国心とまったく関係がないもので、専制をもたらす。
 
 5. 市民権、女性の中絶選択権とプライバシーの保護
 
 6. 労働者の権益を保護
 アメリカの労働者は、二十年前より労働時間が長く、所得が少ない。クシニッチが大統領になれば、労使関係を調整し、税制(とくに不動産税)を調節する。「ミニマム収入」の購買力が二十年前より二一%落ちた現在では、それはもはや有効な指標ではない。「生きていける収入」指標を採用する。五千億ドルを金持ちのために減税するよりも、学校、道路など公共設備建設に投資すれば、経済を刺激する。
 
 7. 教育を充実
 子どもの教育が親の経済状態に左右されるのはおかしい。連邦政府の教育への支出は、予算の二・九%にすぎない。クシニッチが大統領になればこうした政策を変える。幼稚園から大学まで無料の教育を受けることは、アメリカ人の基本的権利と価値である。軍事費を一五%削減すれば、教育費用は十分に足りる。
 
 8. 平和と外交政策の転換
 「先制攻撃」ドクトリンに代表される外交政策は、アメリカをより危険な状態に陥れる。アメリカはAMBTや京都気候変動条約などに署名すべきである。クシニッチはかねてから「平和省」の設立を提唱してきた。非暴力原則は、国内だけではなく国際的にも適用すべきである。
 
 9. 農家を保護
 種から食品まで独占するアグリビジネスを解体し、独立農家の製品を市場に参入させ、安全な食品を確保する。
 
 10. 環境に良い、再利用可能なエネルギーの開発と利用
 
 現実的な当選可能性を前にして、クシニッチの提起する以上の政策は、アメリカが直面する基本問題解決への第一歩である。
 
趙京, 米カリフォルニア州サンノゼ, 2003年11月20日
[かけはし, 2003年12月15日第1809号]