ブッシュ再選後の階級闘争

労働者階級にとって大きな打撃

 二〇〇四年のアメリカ大統領選の結果は、労働者階級にとっては深刻な打撃に違いない。ブッシュは再選後、さらに労働者階級の生存条件を奪い、大企業を代弁する政策を推進する。もちろんアメリカ労働者階級は選挙前にすでに負けていたが、多くの人は「ケリーが勝っても」という期待で、選挙後の闘いを想定してきた。今回の結果は予想よりも厳しかった。
 われわれが特に注目しなければならないのは、大量の白人労働者が民主党のリベラル・エリート路線を捨てて、共和党の社会保守路線のアピールに転じたことである。実は、その現象は、去年のカリフォルニア州の知事選挙ですでに現れていた。アメリカの政治土壌にブッシュイズムが根づき、ブッシュの八年間で氾濫、蔓延して、アメリカ政治を何十年間も後退させるだろう。それはまさに米労働党の創立者トニー・マゾッチが十数年前に指摘した通り、「われわれがリードしなければ悪のアジェンダを持つ勢力が、労働者のマインドを奪っていく」ということだ。
 今回の選挙で、大量の反戦活動家、労働組合員、失業者、全国民保険の活動家が、戦争、自由貿易、保険業者の利益を優先する候補者を精力的に支援した。私の知るカリフォルニア州のNPO活動家も、わざわざミシガン州に行き、いわゆる「不確定州」でケリーを支援してきた。それらの活動はみごとに裏切られた。民主党は選挙での大敗で、さらに「中道」に移行するだろう。

民主党から独立した闘いが必要

 労働・反戦運動は、民主党との関係を断つことはできないが、独立性を保たなければならない。百年前にプルマン・ストライキは資本家階級と政府権力に弾圧されたが、そこから新しい労働運動が生まれた(*) 。今こそ、アメリカ政治は独立した労働運動、労働党を必要としている。
 今回の選挙での投票率は、一九六八年以来最高と言われたが、何十年間もアメリカの四〇%以上の有権者、および何百万もの移民労働者は、このシステムから見捨てられてきた。彼らを組織して、新たな労働者階級の多数派を建設することが当面の急務である。
 ブッシュ再選後のアメリカ政治は、労働者階級にとって生存のための闘争になるため、広範な連帯、大胆な戦略、有限な資源の再配置などが必要である。たとえば中絶、同性婚姻などのイッシューは、労働者階級を分断する道具になってはならない。労働者階級は両大政党が捨てさった、平和、全国民保険、雇用、無料教育などの生存にかかわるイッシューで広範な連帯を組織し、ブッシュ政権下の四年間を闘いぬこう。(04年11月21日)

*編集部注:一八九四年、シカゴのプルマン車両会社の労働者は賃金の二五〜四〇%の引き下げ、高額社宅家賃の据え置きに反対して、会社側との交渉を求めたが、会社側はそれを拒否。プルマン労働者はアメリカ鉄道労組〔ARU〕に支援を求め、二十六万人の鉄道労働者が参加するストライキに発展した。ARUの指導の下に労働者はプルマンの車両を一斉に機関車から引き離し、六月末には全米の鉄道が止まった。この闘争に連邦政府軍が派遣され、抵抗する労働者を銃撃戦をふくめて武力で弾圧し、三十四人の労働者が虐殺された。ARU指導者のユージン・デブスはこの闘争で逮捕され、獄中で社会主義を学び、一八九七年にアメリカ社会民主党〔後の社会党〕を結成する。デブスは一九〇四年から一九二〇年まで、ほぼ毎回の大統領選挙に社会党から立候補した。

米カリフォルニア州サンノゼ Jing Zhao
[Kakehashi Weekly No. 1857, Tokyo]
http://www.jrcl.net/web/frame041206s.html

_Comparative Policy Review_ December 2004